小児科

小児の慢性ITPとピロリ菌の除菌について[オランダ編]

成人においては、慢性ITPにおけるピロリ菌の除菌効果は広く知られているかもしれません。

一方で、小児の報告は少なく、今回はオランダで行われた研究を見つけたため、紹介させていただこうと思います。

マミー
マミー
小児のITPの治療って何がありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

参考文献

H. pylori infection in childhood chronic immune thrombocytopenic purpura. Haematologica 2007; 92:576

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

 背景・目的

小児ITPが慢性化する割合は10-20%と考えられている。Helicobacter pyloriの除菌が血小板回復に対して効果があるか検討すること。

方法

対象となったのは、オランダに在住の小児(年齢は16歳まで)で、ITPによる血小板数が10万/μL以下の症例です。

ピロリ菌の感染は、抗原検査(HpSA, Meridian Bioscience Europe, sensitivity of 89-98%; specificity >90%)を使用し、3剤併用療法で2週間治療しています:

Patients infected with H. pylori were treated with a combination of amoxicillin 15 mg/kg, clarithromycin 7.5 mg/kg bd. and omeprazol 2 mg/kg od. for two weeks.

アウトカムは、

  •  完全寛解:血小板数 > 15万/μL
  •  部分寛解:血小板数 > 5万/μL

としています。

 

結果

慢性ITPと診断された小児47名のうち、 3名 (6.4%) がH.pylori感染をしており、上述の治療をうけました。

治療後3ヶ月の時点で、部分寛解は2名、完全寛解は1名でした。

抗原検査の陰性も確認されています。

結論

この研究結果によると、ピロリ菌の除菌は慢性ITPの小児に有効かもしれないが、結論づけるにはサンプルサイズが少なすぎる。

考察と感想

慢性ITPのある小児でピロリ菌感染例において、ピロリ菌の除菌をした後に血小板が回復したようですね。

対照グループがないので、比較が難しいですね。

Dr.KID
Dr.KID
使った、効いた、治ったの論法になってしまいますね。。

サンプルサイズを大きくして、RCTをするべきでしょうが、単施設ではまず無理な印象ですね。

まとめ

今回は、慢性ITPでピロリ菌を感染していた小児に治療しています。

治療した3例では、血小板数の改善を認めたようです。

今後、RCTなどの報告に期待したいと思います。

 

 

created by Rinker
¥4,950
(2024/04/25 09:59:32時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/25 20:09:23時点 Amazon調べ-詳細)

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。