- 便秘には水分摂取をしっかりしましょう
という指導もあるようです。
今回は、小児の便秘において、水分摂取の有効性を比較検討した研究をご紹介します。
- 小児の慢性便秘を対象に行われた研究
- 水分摂取の励行の効果を検討した論文
- ほぼ効果は認められなかった
アメリカからの報告です。
水分をしっかり摂取すると便秘は改善するのか?
研究の背景/目的
便秘の小児において、水分摂取量および種類の増加は、医療専門家および一般の人々の両方が推奨する一般的な介入である。
水分摂取量および/または高浸透圧の液体摂取量を増加させようとする試みには、便の硬さや排便の回数に影響をもたらすか検討した研究はほとんどない。
この研究の目的は、水分摂取量を増加させることで、排便に対する影響が認められるかどうかを確認することであった。
研究の方法
慢性便秘症のある2〜12歳の小児において、二重盲検ランダム化比較試験を行った。
患者は
- コントロールグループ(介入なし)
- 水分摂取量の増加
- 高浸透圧水の摂取量の増加
のいずれかを割り当てた。
最初の1週間に排便の特徴を把握し、その後に介入が行われた。
研究の結果
それぞれのグループに36名が割り当てられたようです。
対照 | 水分 | 高浸透 | |
排便回数/週 | |||
治療前 | 3.45 | 3.52 | 3.75 |
2週後 | 4.05 | 3.57 | 4.31 |
3週後 | 3.40 | 3.70 | 3.44 |
排便困難 | |||
治療前 | 0.96 | 0.78 | 0.77 |
2週後 | 0.95 | 0.84 | 0.74 |
3週後 | 1.06 | 0.87 | 0.62 |
排便の回数や排便時の痛みなどの推移をみても、ほとんど変わっていないのが分かります。
結論
慢性便秘症のある小児に水分摂取量を増加しても、ほとんど便秘の改善につながらなかった。
考察と感想
少し補足してみようと思います。
水分摂取に関しては普段の摂取量の1.5倍を飲みようにしたようです。高浸透圧の飲料については、ジュースなどで 600 mOsm/L以上の飲料を飲むように指導していたようです。
便秘症における水分摂取はよく言われますが、ほとんどの水分は小腸で吸収されてしまい、便が貯留している結腸や直腸まで達しないのではないかと思いました。
まとめ
今回の研究は、便秘の治療として水分摂取の励行を検討した研究です。
水分摂取量を50%ほど増量させても、排便回数などにはほとんど影響がなかったようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/10/15 08:18:38時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/10/15 12:36:55時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。
(2024/10/15 12:36:56時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/10/15 23:29:06時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。