小児科

小児科医が解説する1ヶ月健診 〜よくある相談とアドバイス〜

  • 1ヶ月健診ってなにをするのですか?
  • 赤ちゃんのこと色々と聞きたいことがあるのですが
  • 先生方は、赤ちゃんのなにを診ているのですか?
  • よくある質問について、教えてください

などなど、たくさんの質問があると思います。

分娩・出産、そして1ヶ月健診までは、環境が目まぐるしく変わり、とても大変な時期であると思います。
また、こどもを育てる上で、様々な疑問が湧いてきているでしょう。

今回は、1ヶ月健診の内容の解説や、よくある質問にお答えしてみます。

Dr.KID
Dr.KID
出産後の1ヶ月で、色々な疑問が湧いてくるでしょう。

1ヶ月健診は何のために?

新生児にとって、生後1ヶ月は劇的な変化があります。

妊娠中は子宮の中で母に守られ完全に依存していた状態から、子宮の外に出て呼吸・栄養摂取を自力で行うようになるからです。

1ヶ月健診では、出産後の環境の変化にきちんと適応できているかを見ています。

今後、成長・発育・発達が順調にできるか、医師がチェックするのが1ヶ月健診の主な役割です。

1ヶ月健診でチェックしているポイント

1ヶ月健診では、以下のポイントをメインに診ています;

  1. 哺乳(母乳・人工乳)
  2. 身長・体重(身体測定)
  3. 発達(反射のチェック)
  4. その他(ビタミンKなど)、体の様子

Smiles 

1.哺乳について

まずは哺乳が上手くできているかを確認しています。
哺乳は、母乳・人工乳・混合栄養のいずれかで、哺乳がきちんと行えているかを見極めます。

Dr.KID
Dr.KID
体重がしっかり増えているのを確認します。

 哺乳が適切に行えているか?

1回あたりの授乳時間を確認しています。

これは授乳量が足りているか、チェックするためです。

私たち小児科医が母乳が足りていないのを心配するのは;

  • 毎回、授乳に30分以上かけてしまっている場合
  • 2時間もたずに授乳している
  • 体重の増加が悪い場合(目安:30g /日)

 母乳が足りていない場合

母乳だけで授乳量がは足りていない場合は人工乳の追加を指導します。

哺乳瓶を使用している場合、乳首のタイプが適切かも確認します。
乳首は、哺乳瓶をひっくり返してポタポタとミルクが落ちるくらいが、ちょうど良いです。 

  赤ちゃんの体重が増えるのが最優先

最初の3ヶ月間は、赤ちゃんの体が急速に大きくなるため、栄養不足にならないように細心の注意を払います。

体重が増えないと脳の発達にも影響しますし、やせていると感染症に罹患した場合に重症化しやすいという報告もあります。

(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ppul.23949)

 完全母乳にこだわりすぎない

母乳をあげることは赤ちゃんに多大なメリットがありますが、母乳不足の場合は人工乳を追加をためらう必要はありません。

完全母乳に強くこだわる産院や産婦人科や小児科、助産師がいますが、母乳が足りず体重が増えないのは、赤ちゃんの健康にとって本末転倒です。

体重を増加を最優先してあげてください。

Dr.KID
Dr.KID
大事なことは、赤ちゃんが大きくなることです。時々、完全母乳栄養にスパルタな産院がありますので、注意してください。

2.身長・体重変化の確認

出生児に身長・体重・頭囲を測りますが、1ヶ月後にも計測して、1ヶ月の増加分を確認します。
出生時と1ヶ月健診で比較して

  • 身長:+2〜3cm
  • 体重:+1kg
  • 頭囲:+2〜5cm

のくらいの増加を目安にしています。

特に体重は1日25〜30gくらい増加するのが望ましいでしょう。

 体重増加が一番重要

栄養状態は体重に反映されるため、体重増加を重要視しています。

出生後〜1ヶ月健診での体重増加が500g以内の場合は、体重増加が不十分とみなします。

この場合、体重が増えない原因を探します。

3.発達の確認

1ヶ月健診では神経の発達も確認しています。
腕や足は屈曲させており、起きているときは上下に動かすのが普通です。

大きな音(ドアが閉まる音等)が聴こえると、体をビクッと反応させるモロー反射がでることもあります。

Moro! 

顔は明るい方をみることが多いです。まだ視力は十分に発達していないため、瞳孔などに異常がないかだけ診ています。

向き癖は、首がすわってくると徐々によくなるので、様子をみていて良いでしょう。
視力は十分にはありませんので、追視はできないことがほとんどです。 

4.その他の注意点

その他、小児科的に注意している点は:

  • 皮膚の状態(黄疸、湿疹、おへそ)
  • 心臓や呼吸の音
  • 神経発達(筋の緊張など)

を見ています。

 ビタミンKシロップについて

ビタミンKシロップですが、

  • 毎週投与
  • 生後、退院前、1ヶ月健診

に飲ませる病院・クリニックで方針がことなります。

この1ヶ月健診で飲ませている病院もあるようです。
ビタミンKシロップについては、こちらで詳しく書いています。

www.dr-kid.net

Dr.KID
Dr.KID
重大な出血予防に重要です。

新米ママによくする育児アドバイス

母親によくするアドバイスは;

  1. 母乳・ミルクは飲みたいだけ飲ませてOK
  2. 授乳は抱いて行いましょう
  3. 入浴・シャワーで皮膚の清潔をしてください
  4. 赤ちゃん用のソープなどは使用OK
  5. 果汁とハチミツは与えないで

が多いです。

1ヶ月健診でよくある質問にお答えします

 顔や頭に赤い湿疹ができます

脂漏性湿疹や乳児湿疹のことが多いです。

基本は保湿と清潔で治療をしますが、ひどい場合にはステロイド軟膏を使用してます。

◎詳しくはこちら:

小児科医が乳児湿疹を簡単に解説します【赤ちゃんの皮膚トラブル】乳児湿疹って何!? 『乳児湿疹』は、赤ちゃんの肌トラブルの総称です。 具体的には: 新生児痤瘡 脂漏性湿疹 皮脂欠乏...

 お尻が赤いです

ほとんどがオムツ皮膚炎です。
亜鉛華軟膏などで、お尻の皮膚に便がつかないようにするとよいでしょう。

◎ 詳しくはこちら↓:

 乳汁がでたり、膣から出血しました(女児)

母親の女性ホルモンが急になくなったため、このような反応がでるお子さんがいます。
一過性で終わる事がほとんどですので、様子をみていてよいでしょう。
ご心配であれば、1度、小児科に相談してください。

排便について

授乳の度に便が出ていても全く問題ありません。
最低でも1日1回は排便している状態が望ましいと思います。

綿棒にベビーオイルなどをつけて肛門をつっつくだけでも出ることがあります。
肛門に綿棒を1−2cmほど入れてゆっくり円を描くように動かします。

綿棒刺激はくせにはなりませんから、毎日やっても大丈夫です。

www.dr-kid.net

目が上を向くのは大丈夫?

  • 『赤ちゃんが白目をむくんです』
  • 『眠る時に上を見るんです』

という相談をうけます。
深夜の救急外来に受診された方も過去に何人かいました。

赤ちゃんが眠る時に目が閉じきれないことがあるため、気になってしまうのでしょう。

大人も眠っているときは、眼は上転しています。
ですので、基本は心配いりません。

顔に赤色のアザがあります

 

顔の中心に薄くて淡い赤色のアザができることがあります。
おそらくサーモンパッチでしょう。 サーモンパッチの特徴は、指でやさしく押すと消えて、指を離すと目立つようになります。
1歳の誕生日くらいまでに消えてしまうことが多いです。

 

うなじに赤い斑点があることがあります。
これは『ウンナ母斑』です。
こちらも正常の範囲内ですので心配いりません。

色は薄くなりますが、髪が伸びてきて目立たなくなるので、そのまま様子をみていて良いことがほとんどです。

青いあざがあります

 

青いあざで代表的なのは蒙古斑(もうこはん)で、多くの赤ちゃんでみられます。

基本的には小学生になる前後に薄くなることが多いです。

手足にある青あざを「異所性蒙古斑」と呼ぶことがあります。こちらの青あざは消えにくいことが多いです。

茶色いあざがあります

平坦で茶色いあざは「扁平母斑」が多いです。

 

しゃっくりが多いです

しゃっくりは横隔膜のけいれん(筋肉の収縮)です。

月齢が小さいうちは、しゃっくりをしやすいのですが、体に害はないので様子をみていてよいでしょう。
しゃっくりが毎日でても、一日に何度出ても心配はありません。

母乳が足りているか心配

大まかな目安ですが、おしっこの回数が1日に7〜8回程度あれば十分に飲めているといえます。

健診の時に体重が順調に増えていれば問題ありません。

一週間前の写真などと比べて、顔が丸くなって来ていれば大丈夫です。
どうしても体重が心配であれば、ご自宅で赤ちゃん用の体重計を購入して、定期的に計測されてもよいでしょう。

1日あたり25〜30g 以上増えていればOKです。

こんなときは医療機関へ受診しましょう

新生児は体の調子を崩すのも早いです。
特に気をつけて欲しい点は:

  • 38℃以上の発熱がある
  • ミルクを噴水上に何回も吐く
  • 何回あげても、母乳・ミルクを普段の半分以下しか飲めない
  • ゼーゼーが続くとき

です。
この時は、近くの医療機関へ受診されましょう。
特に、発熱や苦しそうな時は、入院できるような大きな医療機関をオススメします。
(新生児が発熱した場合は、基本的に入院になります) 

 

 あわせて読みたい

www.dr-kid.net

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。