- 新生児もヘルペスに感染するのですか?
- 口の周りにぶつぶつが出て終わりじゃないのですか?
- どのように感染するのですか?
「生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)のヘルペス感染」と聞くと、なかなかイメージが湧きづらいかもしれません。
ヘルペスと聞くと、口の周りに出来る小さな水ぶくれ(水疱)を思い浮かべる方が多いでしょう。
あるいは、陰部にできる性感染症を想像する方もいるかもしれません。
しかも、大人のヘルペスは、自然に治ることが多く、重症化する例は非常に少ないです。
しかし、新生児がヘルペスウイルスにかかると非常に危ないです。
今回は、新生児ヘルペスについて解説していきます。
- 新生児ヘルペスの特徴を知る
- 新生児のヘルペスは、大人のそれとは異なることを知る
新生児の場合、大人と異なり免疫能が弱く、ヘルペス感染が重症化してしまうことがあります。
特徴的な皮膚の所見や、発熱があるときは、お早めに受診しましょう。
新生児ヘルペスについて
俗にいう「ヘルペス」とは、「単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)または2型(HSV2)」による感染症をいいます。
1型(HSV1)は上半身の皮膚粘膜病巣から、2型(HSV2)は陰部から分離されることが多いです。
新生児のヘルペスは、産道感染が多い
新生児期のヘルペス感染は、80%程度が単純ヘルペス2型(HSV2)による感染です。
これは、感染する経路として、子宮・膣が多いためです。
実際:
- 産道感染は85%
- 子宮内感染は5%
- 生後での感染は10%
といわれています。
特に、妊娠第3期(およそ妊娠8ヶ月)以降に妊婦がヘルペスに初感染すると、新生児にヘルペスウイルスが感染してしまうリスクが高いです。
(およそ50%というデータもあります。)
出生後ですが、新生児がヘルペス感染の症状が出やすいのは、生後2日〜14日です。
症状は、いくつかのパターンがあるので、以下に示します。
- 皮膚・目・口の症状
- 脳炎
- 播種性感染症
の3つが代表的です。
皮膚・目・口の症状(SEM, skin-eye-mouth)
日齢10日前後で、皮膚・眼・口に特徴的な水疱を伴う皮疹が出現します。
散在する水疱と眼の結膜炎が特徴的です。
新生児ヘルペスは、神経系の後遺症を残しやすいです。
過去の研究によると、治療を受けなかった場合:
- 30%〜40%で神経に後遺症がでた
- 75%の症例で中枢神経(脳・脊髄)や全身に感染が広がった
という報告があります。
このため、そのため、新生児ヘルペスを疑ったら、全例で治療を開始します。
基本的に全例に抗ウイルス薬を使用した治療が必要です。
抗ウイルス薬による治療をうけなければ、30-40%に神経学的後遺症を残すためです。
また、抗ウイルス薬による治療をしないと、75%が中枢神経あるいは全身に感染が広がるからです。
中枢神経感染症(脳炎)
ヘルペスウイルスが中枢神経(脳・脊髄)に感染した場合、
- 不機嫌が続く
- ぐったりして哺乳できない
- 痙攣を繰り返す
- 低体温になる
があります。
脳や脊髄の周りにある液のことを髄液といいますが、ここの液を培養検査に出すと、25%〜40%で陽性となります。
さらに、髄液中のタンパク質の上昇や、単球という細胞の増加を認めます。
先ほど説明したSEMのように皮膚の異常を認めないことが、40%程度であるため、とても注意が必要です。
播種性感染について
この「播種性感染」は、生後10日前後で起こります。
「播種性」とは、全身に広がることを言います。
つまり、ヘルペスウイルスが、全身の複数の臓器へと広がり、様々な症状を認める状態です。
具体的な症状として、不機嫌、痙攣、呼吸窮迫、横断、出血傾向などがあります。
非常に重篤ですので、適切に治療をしても生存率は70%、神経学的異常は15%で後遺症として残る可能性があります。
新生児ヘルペスの診断方法
ヘルペスウイルスの検査は;
- 血液検査
- 髄液検査
- ウイルスの培養
- 遺伝子増幅検査(PCR)
があります。
この中では、PCRは結果が比較的早く分かり、精度が高いのですが、特殊な機械が必要なため、行える施設はかなり限られています。
施設ごとに行える検査は限られているため、これらの検査を組み合わせて総合的に判断します。
新生児ヘルペスの治療について
基本はヘルペスウイルスに効く、抗ウイルス薬を使用します。
抗ウイルス薬 (アシクロビル) の点滴を14日〜21日程度と長期間することが多いでしょう。
アシクロビルは一般的には副作用が少ないのですが、好中球減少を起こすことがあるため、定期的に血液検査でチェックします。
新生児のヘルペスは…
- 生後2週間(14日)くらいまでに多い
- 髄膜炎・脳炎など重症化してしまう可能性がある
- 新生児の発熱は、お早めに医療機関へ受診を
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◎ 世の保護者の方々は、子供の病気を勉強する機会は限られていると思います。小児科医が書いた病気の説明書を1冊、自宅に置いておくと、いざという時に便利でしょう。私もこの本を読んで、どのように保護者の方に伝えるとよいか、日々勉強しています。