科学的根拠

小児の発熱に解熱薬を使用すると、発熱や風邪症状は短縮するか?

  • 「解熱薬を使ったのですが、一時的にお熱が下がっても、またすぐに戻ってしまいました」
  • 「解熱薬を使用して、かぜ症状や発熱は早く治りますか?」

など、外来で保護者の方々から素朴な疑問をたくさんいただきます。

小児の解熱薬といえば、アセトアミノフェン(カロナール®︎やコカール®︎)が一般的です。
もちろん熱を下げたり、痛みを抑えたりする効果がありますが、薬の効果を実感できるのは数時間〜5−6時間くらいでしょう。

実際に解熱薬を使用して、一時的に熱を下げる以外にメリット・デメリットがないか研究したのが、本日ご紹介する論文です。

参考文献

Kramer MS, et al. Risks and benefits of paracetamol antipyresis in young children with fever of presumed viral origin. Lancet. 1991;337:591-4.

今回の研究は解熱薬によって

  •  発熱期間やかぜの症状の期間が変化するか?
  •  不快感や食欲は改善するか?

と言った点に答えようとしています。

研究の背景

小児が感染症に罹患すると発熱してしまうことがあります。
かつては「発熱は体に悪いこと」と過剰に評価していた医療者も少なからずおり(熱恐怖症)、解熱薬が積極的に使用されているケースもあったようです。

また、「発熱は病原体と体が戦っている証拠だから、熱を下げるべきではない」とやや極端な論調で、解熱剤の使用そのものを嫌う医師も中にはいます。

実は発熱時に解熱剤を使用すべきか検討した研究は複数あり、今回は主にウイルス感染症(かぜ)をメインターゲットにした論文をご紹介します。
(水疱瘡や入院患者で使用されたものは、後日、ご紹介します)

研究の方法

今回の研究はモントリオールで行われたランダム化比較試験で、

  •  6ヶ月〜6歳
  •  発熱が4日以下
  •  熱が38℃以上ある
  •  細菌感染症ではないと思われる

小児を中心に行われました。ランダムに

  •  プラセボ
  •  アセトアミノフェン

を4時間毎に必要に応じて使用しています。
入浴やスポンジによる体幹・四肢の冷却、他の薬の内服は行わないように指導されています。

アウトカムの評価

アウトカムは日記形式で

  •  体温(1日4回)
  •  薬を投与した後、1ー2時間後の体温
  •  活動性、意識、機嫌、不快感、食欲、経口摂取(5点のLikert scale)

で行われています。

この研究のサンプル数を決定するのに、

  •  発熱期間の差が1日以上
  •  かぜ症状の期間の差が2日以上

を優位なものとし、210人を研究に参加することとしました。

研究結果と考察

最終的に225人の小児が参加し、123人がアセトアミノフェンを、102人がプラセボで治療を受けました。
患者背景は以下のようになります(論文から拝借):

Dr.KID
Dr.KID
どちらのグループも似たような傾向にありますね。

発熱やかぜ症状の期間

発熱やその他のかぜ症状の期間は、アセトアミノフェンを使用したグループとプラセボのグループとでは、差はありませんでした。

Dr.KID
Dr.KID
解熱薬を使用したからといって、熱の期間が短くなったり、症状が長引いたりはしないようですね。

時々「解熱薬を使用すると、かぜの症状が長引く」と説明している医師もいるようですが、こちらの結果からは、そのような根拠はなさそうです。
特にかぜ症状の期間を含め治りが遅くなるわけではありませんので、解熱薬を必要以上に恐れなくて良いでしょう。

Likert-scaleの結果

小児の体調を表した評価を、アセトアミノフェンとプラセボグループで比較しています。
解熱薬を使用すると、

  •  全体的な活気と注意力は向上する

といえそうです。
統計学的な有意差はありませんが、機嫌と食欲もやや改善しそうな印象ですね。

考察と感想

「解熱薬って具体的にどのようなメリットがありますか」と外来で質問されることが多々あります。
今回の研究は、その質問にしっかりと答えていると思いました。
そういう意味では、非常によくデザインされ、貴重な小児の臨床研究と言えます。

例えば、今回の研究から、

  •  解熱薬のせいで風邪症状が長引くわけではなさそう

とも言えます。その一方で、解熱薬を飲んだからといって、発熱期間が短縮するわけでもなさそうです。

さらに、解熱薬を使用するメリットとして、

  •  活気や注意力が向上する
  •  食欲や機嫌も多少良くなるかもしれない

といった点も示唆されています。

「辛そうにしていたら解熱薬を使ってください」と小児科で説明されることも多々あると思います。
この理由として、発熱による辛さを取ってあげることで、活気が少し上がったり、食欲や機嫌が一時的にでも和らいでくれると、保護者の立場からしても少し安心できるのではないでしょうか。

まとめ

今回の研究では、かぜの小児に解熱薬を使用しても発熱やかぜ症状が長引くわけではなさそうでした。

また、解熱剤を使用してあげることで、活気や注意力が軽快したり、ひょっとしたら食欲や機嫌も良くなるかもしれません。

まとめ

小児のかぜに対する解熱薬は…

  •  かぜ症状や熱を長引かせない
  •  (熱によって低下した)活気や注意力が改善する
  •  食欲や機嫌が改善するかもしれない

Dr. KID

ABOUT ME
Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。