小児科

小児科医が解説する乳児突然死症候群(SIDS)

 

乳児突然死症候群 (SIDS)って何ですか?

まずは乳児突然死症候群の定義ですが;

それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない,原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群

と定義されています。
わかりやすくいうと『1歳未満の小児の原因不明の突然死』のことを『乳児突然死症候群』といいます。

乳児突然死症候群の歴史

乳児突然死症候群(SIDS)の概念は1969年に米国で提唱されました。
遅れること10年強の1982年、日本ではようらく厚生省研究班によって定義されました。

乳児突然死症候群 (SIDS)の頻度ってどれくらい?

乳児突然死症候群は、米国では1/ 1800の頻度で起こっています。
つまり、1800人の子供が出生して、そのうち1人が乳児突然死症候群で亡くなっています。

乳児突然死症候群は、乳児の死因第1位となっています。
特に生後1週〜6ヶ月以内 (特に2-4ヶ月) に多いといわれています。

Dr.KID
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起こりやすい時期があるのは確かです。

日本での統計

日本の統計では、1歳未満の死因の第3位となっています。
(ちなみに1位:先天奇形, 2位;呼吸器の障害)

6000人〜7000人に1人がSIDSになると日本では言われていますが、この数字は過小評価されている可能性があります。
なぜなら、海外(例えばアメリカ)ほどSIDSの報告や調査するシステムが確立していないためです。
(時々、「日本でSIDSが少ないのは、〇〇のおかげ」と言っている方をみかけますが、ほとんどのケースで科学的根拠がありません) 

乳児突然死症候群 (SIDS) の原因

この疾患は現在でも原因不明です。
家族が全く気づかないうちに呼吸が止まり、心臓が停止してしまうため、確実な予防策がないのが現状です。

SIDSは事故ではなく、1つの疾患として認識されていますが、不慮の事故や窒息との鑑別が難しいです。
いくつかSIDSになりやすい要因は;

  1. 母親
  2. 子供
  3. 環境
  4. その他

の4つに分類されています。
海外で行われた研究のデータが多いため、必ずしも日本の乳児で一般化できない(当てはまらない)かもしれませんが、十分参考にはなると思います。

Dr.KID
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100%予防できるような確実な方法はありませんが、それでもリスクを知って可能な範囲で回避すると良いでしょう。

1.母親の要因

母親側の要因として多いのは;

  • 20歳以下
  • 低い社会・経済的地位(貧困や教育レベルの低さ)
  • タバコの喫煙(妊娠中:リスクは5倍)
  • 産前の管理が少ない
  • 未婚 ・違法薬物使用

です。
私個人としても、乳児突然死症候群の症例を経験していますが、若くて、経済的に不安定な方に多い印象です。

2.子供の要因

子供側の要因として多いのは;

  • 未熟児 ・低身長
  • うつ伏せ or 横向き で寝かせている
  • 男児 (男 : 女 = 60 : 40)
  • 多産
  • 生後2〜5ヶ月

です。
生後半年を過ぎると、首もすわって寝返りもできるようになるので、気づかない間の窒息などによる突然死のリスクは減るのでしょう。

3.環境要因

環境要因として多いのは;

  • 冬 (65-70%)
  • 柔らかいベッド
  • 室温が高い
  • 喫煙者と同居している
  • 家庭外での睡眠
  • 両親など家族とベッドを共有している(添い寝)

です。
日本の場合、ベッドや寝床が一緒のことが多いですが、保護者の腕や足で知らない間に圧迫してしまうケースも多いのです。

夜に添い乳をされている保護者も多いですが、小児科的に基本的にオススメできません。
(SIDSにならなくとも、誤嚥性肺炎に罹患した乳児もいます)

 

時々、小児科を専門としない医師、医療関係者や睡眠アドバイザーの方が「添い寝・添い乳OK」とコメントしているのを見かけます。しかし、SIDSや誤嚥性肺炎の子供を複数診療した経験から、決して安全な行為とはいえませんので、ご注意ください。

Dr.KID
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実際にSIDSに遭遇したり、誤嚥性肺炎で呼吸不全になった子どもを診療したことのある小児科医なら、気軽に「添い寝OK」などと言えないと思います。

以下の研究結果でも、添い寝がSIDSのリスクと判明しています;

4.その他

その他の原因として;

  • SIDSの家族歴あり
  • 母乳栄養なし

があります。

家庭でできる乳児突然死症候群(SIDS)の予防法

沢山の原因が列挙されていますが、まず家庭で管理できそうなことは:

  1. 喫煙はしない
  2. こどもの睡眠環境を整える
    (ベッドの共有(添い寝)しない、柔らかいベッドの素材は避ける)
  3. 睡眠中の体位に気をつける(うつ伏せ(腹臥位)はNG)

あたりでしょう。

仰臥位(仰向け)で寝かせましょう

(特に6ヶ月未満の)乳児は仰向けで寝かせましょう。
うつぶせ寝や横向き寝は、乳児突然死症候群のリクスになります。

仰向け寝は、科学的根拠のある予防法です。

アメリカで『Back to Sleep (仰臥位で寝かせましょう)』というキャンペーンをしたところ、乳児突然死症候群の症例が減少したことが報告されます。

この方法で50%程度リスクを軽減させることができるといわれています。


 

睡眠環境を見直しましょう

避けたほうがよい睡眠環境は ;

  • 柔らかいベッドを避ける:ソファーやウォーターベッド
  • 頭を覆うものは置かない:枕などは不要
  • 横向きもNGですよ:最も危険な腹臥位になるため
  • 添い寝・添い乳も窒息の危険があるので、やめましょう

あたりを見直しましょう。

繰り返しになりますが、日本古来の風習もあり、添い寝・添い乳をされていることが多いですが、赤ちゃんは赤ちゃん用のベッドで一人で寝かせるほうが安全といわれています。
同じ部屋に寝るのはOKですが、一緒のベッドで眠るのはやめやほうがよいでしょう。

一緒のベッドに眠ってしまうと、保護者の体が赤ちゃんの口や体を圧迫してしまうことがあります。

また、添い寝は赤ちゃんの睡眠の自立を妨げるともいわれています。
最初から一貫して、赤ちゃんは自分のベッドで寝かせるとよいでしょう。

 おしゃぶりの使用はOKです

おしゃぶりの使用は大丈夫です。
しかし、睡眠中に口から外れた場合、寝ている間は口に戻さないようにするとよいでしょう。

乳児突然死症候群 (SIDS) の鑑別疾患

SIDSと鑑別が必要な疾患は

  • 重症感染症:髄膜炎、敗血症
  • 不整脈や先天性心疾患
  • 代謝性疾患
  • 児童虐待

などがあります。
しかし、実際病院に運ばれてから、これらの疾患と鑑別するのは難しいことが多いです。

Dr.KID
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どこからSIDSというべきか、線引きは曖昧になってしまうこともあります。

あわせて読みたい

 

参考文献

  • Arch Dis Child 2008: 162 (10): 963-968
  • Pediatrics 2005: 116: 716-723
  • 小児科学 (p.873)
  • Bright future (AAP). 3. Promoting child development. p48-49.
ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。