小児科

子どもの夜尿症(おねしょ)について解説します

夜尿症のメカニズム

夜尿症は、睡眠中に作られる尿の量と、尿を貯める膀胱の用量のバランスが悪いと起こります。 つまり、

『睡眠中の量 > 膀胱の量』

というアンバランスの結果、尿の失禁(おねしょ・おもらし)が起こります。

Dr.KID
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尿の量と膀胱の容量のアンバランス

夜尿症の定義

まず、「夜尿症(おねしょ・おもらし)」の定義ですが

  • 夜間の尿失禁 (6歳以降)
  • 日中の尿失禁(4歳以降)

がある場合をいいます。
夜尿症に該当する場合、原因は様々ですので、お子さんそれぞれで個別に対策を相談しています。

夜尿症の頻度について

どの程度の割合で、夜尿症になっているのか気になる保護者も多いです。
夜尿症の頻度ですが、

  • 5歳 15%
  • 8歳 7%
  • 10歳  5%

といわれています。
7歳以降は1歳上がる毎に1%ずつ減っていきます。
多くはないですが、夜尿症の10%は器質的疾患があるため、精査をすることがあります。

夜尿症の分類

夜尿症は以下に分類します:

  1. 原発性夜尿症 :
    日中も夜間も尿失禁をしない年齢なのに、尿失禁する
  2. 二次性夜尿症 :
    6ヶ月以上おもらし・おねしょがないのに、尿失禁する
  3. 複雑型夜尿症 :
    日中に頻繁に尿失禁する、身体所見で異常あり、UTIが頻繁に再発する
  4. 多尿型 :
    夜間尿量が多い (夜間尿量の上限: 6-9歳 200ml, 10歳 250ml)
  5. 膀胱型:
    膀胱の容量が小さい
  6. 混合型:
    上記の混合

の分類となっています。

Dr.KID
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夜尿症にも色々と分類があります。

夜尿症と区別すべき病気はありますか?

小学校以降も夜尿症がある場合、以下の疾患がないか気をつけています:

  1. 解剖学的な問題 ・異所性尿管 ・慢性便秘 ・痙性膀胱
  2. 神経発達 ・神経学的な未熟 
  3. 糖尿病 ・尿崩症 ・鎌状赤血球 ・頻回の尿路感染症 ・二分脊椎 ・てんかん
  4. 社会的な問題など ・心理社会的ストレス ・性的虐待 ・夜間の多飲

です。

Dr.KID
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基礎疾患がないか見極めるのは重要です。

夜尿症の診断方法

診断は以下に従います:

  1. 病歴(夜尿のエピソード、発達歴 )
  2. 泌尿生殖器・神経学的な診察
  3. 尿検査・尿培養

確認します。

まずは、保護者と夜尿の経緯を詳細に聞きます。
この時に、これまでに発達の異常がないか、腎臓や膀胱、陰部に異常がないかも気をつけます。
そして、夜尿の原因となる膀胱炎や神経の異常がないか、診察や画像検査で確かめます。

夜尿症の治療について

治療は小学校入学前後から始めるのが、一般的です。
治療のオプションは、4種類あり:

  1. 保護者の教育
  2. 併存疾患(特に便秘症)の治療
  3. おねしょアラーム
  4. 薬物治療

の順に行います。

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Dr.KID
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治療法はいくつかオプションがあります。

1. 保護者への教育

まずは保護者の教育をします。
私個人としては、この「保護者教育」が最も重要と考えています。
というのも、夜尿症をかかえる保護者の方は、そのストレスからか、子供に厳しくなりすぎているケースが非常に多いからです。

Dr.KID
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子どもに怒れば改善するわけではありません。

『焦らせない』『怒らない』が原則

決してお子さんを批判してはいけません。叱るのは絶対にやめましょう。
お子さん批判し、叱責すると、かえって夜尿症の症状が長引きます。

たとえ、おねしょをしても、『あら、おねしょしちゃったの!?』くらいに留めましょう。
『じゃあシャワー浴びて、下着を変えなさい』
『ママは、洗濯をしておくから』
と事務的に済ませましょう。

保護者の方が『なんで、おねしょしたの?』と怒っても、感情をあらわにしても、夜尿症は治るわけではないことを理解してください。

Dr.KID
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他のお子さんと比較して焦るのもやめましょうね。お子さんそれぞれに成長と発達のペースがあるのです。

生活習慣の指導

生活習慣の改善で夜尿症が軽快することもあります。
水分は日中に多めに摂取し,夕方以降は200cc以内に水分を制限すると良いでしょう。

寝る前の飲水は避けて、ベッドに行く前に排尿して、膀胱を空にする習慣をつけましょう。
生活リズムが乱れると夜尿症は悪化しやすいので、できるだけ規則的な生活をするようにしましょう。

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水分摂取のタイミングを見直しましょう。

2.併存疾患(特に便秘症)の治療

夜尿症のお子さんは、便秘気味なことが多いです。
経験上ですが、便秘の治療をしたら夜尿症が改善した、あるいは治ったというお子さんも多いです。
ですので、便秘があれば、夜尿症と同時に治療をします。

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意外と便秘と関連していることがあります。

3.おねしょアラームの導入

 保護者の教育や生活習慣の改善、便秘症の治療をしても夜尿症が改善しない場合、『おねしょアラーム』を着けてもらうことがあります。

 夜間にパンツへお漏らしすると、おねしょアラームにあるセンサーが水を感知して、アラームが鳴ります。
夜尿とともに、アラームが鳴るので、目が覚めて、おねしょをしたことを子供に気づかせることができます。

おねしょアラームは大変有効で、80%程度で治療できた、報告もあります。

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必ずしも薬が必要なわけではありません。

4.薬物療法

内服薬には様々な副作用があるので、まずは生活習慣の改善、保護者への指導、便秘の治療、おねしょアラームを試してもらいます。
これらを組み合わせても、どうしても夜尿症が改善しない子に薬の治療をします。
薬物療法は、

  • イミプラミンという三環系抗うつ薬
  • 抗利尿ホルモン

を使用しています。

よく効く薬ですが、再発率が高いのが問題です。
薬をやめると、夜尿症が再発してしまうことが、そこそこあります。
薬の力で夜尿症が軽快しているだけで、夜尿を防ぐ方法を体が覚えていない状態といえます。

Dr.KID
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薬をやめると、再発してしまうこともあります。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。