ドクター・キッド

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受動喫煙によってRSウイルス感染が重症化するかもしれない

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  • こどもの健康にも受動喫煙が悪影響するのは本当?

と聞かれることが未だにあります。

受動喫煙がこどもの健康に悪影響である科学的根拠はこちらにまとめています。

www.dr-kid.net

今回は、これらに加えて、乳児に多いRSウイルス感染症の重症化との関連を示した研究がありましたので、こちらで紹介します。

研究の背景

  • 世界では40〜50%の小児がタバコの煙にさらされている

とも言われています。受動喫煙のもとは、ほとんどが保護者や家庭内の同居者です。

受動喫煙と小児の呼吸器については、数多くの研究があり、

  • 喘鳴や気管支喘息の危険因子
  • 咳が増える
  • 痰の排出量が多くなる

などがいわれています。

RSウイルス感染について

  • RSウイルス感染って何?

という方のために、こちらに詳しく書いています。

 RSウイルス感染のポイントだけ説明すると、

  • 乳幼児の呼吸器感染の原因として最も多い
  • 50%は1歳までに、ほぼ100%は2歳までに感染する
  • 軽いかぜ〜細気管支炎と、幅広い重症度
  • 1〜2.5%の患者は入院が必要

といわれています。

乳幼児期にだれしもがかかる疾患ですので、重症化は避けたいところです。

ニコチンとコチニンについて

「ニコチンとコチニン」と名前が似ていて紛らわしいですね。

ニコチンの代謝産物がコチニンです。もう少し詳しく説明すると、

  1. タバコの煙にあるニコチンが肺から吸収され
  2. 肝臓で代謝されてコチニンになり
  3. 最後に尿に排泄される

というステップです。

つまり、最終的に排泄される尿中コチニンを計測することで、小児の受動喫煙の程度を推定できます。

 

研究の目的

 少し前置きが長くなりました。

  • RSウイルスは2歳までに100%が罹患する
  • 1〜2.5%は入院が必要となる

と、避けられない感染症であるため、受動喫煙を予防することで入院率を下げたい(つまり重症化を避けたい)と考えられます。

このため、今回は受動喫煙とRSウイルス感染の重症化の関連性をみています。

 

研究の方法

今回は、

  • オーストリアのウイーンのWilhelminen病院
  • 救急外来での処置や入院が必要であったRSウイルス感染
  • 1歳以下

を対象に研究が行われています。

 

尿中コチニン濃度とRSウイルス感染の重症度

前述のように、受動喫煙の指標として尿中のコチニン濃度が計測されています。

 

入院時の重症度の指標として、Clinical Severity Score At Admission (CSSA)という指標が使用されています。

(以下、論文から掲載)

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研究の結果と考察

  • 217人の患者が対象となり、32人が除外

となりました。対象患者の特徴は、

  • 平均 106日
  • 男女比=53 : 47
  • コチニン(受動喫煙):陽性=25人、陰性=160人

でした。

受動喫煙と酸素飽和度

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 左側は尿からコチニン(ニコチンの代謝物)が検出されたグループ(受動喫煙グループ)で、右側は受動喫煙なし(コントロール)です。

と、受動喫煙グループのほうが酸素飽和度が低かったです(呼吸状態が悪い)。

受動喫煙と呼吸状態の重症度

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CSSA(呼吸状態の指標)では、

受動喫煙ありのほうが、呼吸状態は悪かったです。

 

研究のLimitation(限界)について

ニコチンの代謝産物であるコチニンを尿で測るため、受動喫煙の有無を確かめています。

喫煙の有無を問診で聞いても、親が正確に答えない可能性があるので、尿中代謝産物で誤分類(misclassification)を減らせたのかもしれません。

一方で、

  • ニコチンによる影響か
  • タバコの煙(あるいはそのほかの物質)による影響か

は本研究でははっきりとわからないです。

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当然といえばそうですが、尿中コチニンはあくまでタバコの煙に含まれるニコチンの代謝物をみているにすぎません。

ニコチンやコチニンが問題ではなく、タバコの煙に含まれる他の物質(X)が呼吸状態に関連している可能性は十分にあるでしょう。

 

まとめ

今回は受動喫煙によってRSウイルス感染が重症化する可能性が示唆されました。

RSウイルス感染は、2歳までにほぼ全ての小児が感染し、1%〜2.5%の割合で入院が必要となります。

受動喫煙を避けることで、重症化予防に繋がるかもしれません。

 

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