疫学

システマティック・レビューとメタ解析について③ 〜異質性(Heterogeneity)について〜

前回、システマティック(系統的)レビューとメタ解析において、仮説を立てて文献検索をする点について説明してきました。

 

文献検索をして、メタ解析をする論文を選んだら、計測された効果(Effect Estimate; Risk Ratio, Rate Ratio, Odds Ratioなど)と分散(Variance)を並べて比較することになります。

例えば、10個の研究があれば、10個のORと分散があり、ばらつきが大きいことも、小さいこともあります。

非常にシンプルにいうと、

  • ばらつきが大きいことを異質性(Heterogeneity)
  • ばらつきが大きくないことを均質性(Homogeneity)

といいます。
今回はHeterogeneity(異質性)と、その評価方法について解説していこうと思います。

Homogeneity (均質性)とHeterogeneity (異質性)

まずは下の2つのメタ解析の結果(Forest Plot)をみてみましょう。

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例えば、左のメタ解析はわりと結果が似通っていて、右の解析結果はバラバラの結果であると、直感的にわかると思います。

Homogeneity (均質性)であるとは

上の解析結果は直感的にわかると思いますが、分かりやすく詳しく説明していきましょう。

左の研究では24個の結果が掲載されていますが、いずれの結果もRisk Ratiio =1付近にいます。
95%信頼区間(横棒)をみると、どの研究も RR = 1をまたいでいたり、お互いのRRを被っているため、似通った研究結果ということができます。

このような状態をHomogeneity(均質性)といいます。

Heterogeneity(異質性)であるとは

上の結果(Forest Plot)の右側をみてみましょう。

  • とある研究は odds ratio (OR)が 1をはるかに下回る
  • 別の研究の OR は 1 付近
  • ある研究の OR は 1 を上回る

と右に左にと、かなり忙しい結果になっています。

このように、研究毎に有効である、無効である、有害である、と結果がコロコロかわる状態を異質性(Heterogeneity)といいます。

Heterogeneity(異質性)が起こる原因

Heterogeneity(異質性)が起こる原因は様々ですが、大きく分けると

  • 研究の違い
  • 内的妥当性(Internal Validity)

の2つに分けられます。

研究の違いについて

研究をするには様々な対象集団を決めたり、治療とアウトカムなどを定義しないといけません。例えば

  • 対象集団:年齢、性別、人種、基礎疾患
  • 治療:薬の投与量・期間など
  • アウトカム:おこりやすさ(頻度)の違い
  • コントロール:プラセボか、標準治療か
  • 追跡期間

などが異なることが多々あります。

例えば、基礎疾患がある場合とない場合では、治療効果が変わってしまうことがあります。

内的妥当性について(Internal validity)

内的妥当性(Internal Validity)の問題として

  • 交絡(Confounding)の対処が不十分
  • 選択バイアス(Selection bias)
  • 誤分類(Misclassification)

などがあげられます。

RCTであれば交絡の懸念は小さくなりますが、コホート研究や症例対照研究では十分にありえます。

選択バイアスは、RCTであっても、ドロップアウト(Loss to follow-up)が多ければ起きます。

誤分類は、どのように治療が定義づけられたか(遵守率も大事)、アウトカムは誤分類がないか(偽陽性や偽陰性)のことを指します。

Heterogeneity(異質性)の例

概念的なところを説明しましたので、ここからは実例でみてみましょう。

血中のコレルテロール値の低下と虚血性心疾患のリスクを解析した研究結果です。
10個のコホート研究から行われたメタ解析になります。

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虚血性心疾患のリスクがどれだけ(何%)減ったかをみているのですが、研究によって20%〜35%くらいでかなりばらつきがあり、Heterogeneity(異質性)があるといえます。
Heterogeneity(異質性)の原因は上にあげた通り、様々な要因で起こり得ますが、今回は

  • 年齢
  • コレルテロールの減少率

といった第3の因子があげられました。

このようなHeterogeneityの原因となる第3の因子のことを「Effect modifier(効果修飾因子)」と呼ぶことがあります。

年齢で Heterogeneity (異質性)を説明してみる

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 例えば、年齢別に分類して、治療による虚血性心疾患のリスク減少率を評価すると;

  • 若い(40代より)ほうがリスク減少率は高い
  • 高齢(70代より)のほうがリスク減少率は低い

ことがわかります。

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このことを踏まえると、メタ解析の中に

  • 高齢者が多い(平均年齢が高い集団)
  • 高齢者が少ない(平均年齢が低い集団)

があったことがわかります。

高齢者と非高齢者では治療効果がことなるため、このままメタ解析をすることができません(Pooled effect estimateを算出できない)。

このような場合は、meta-regression (メタ回帰分析)という手法を用いることがあります。これは次回以降に説明できればと思います。

まとめ

今回はHomogeneity(均質性)とHeterogeneity(異質性)について解説してきました。

次回以降は Heterogeneity(異質性)の統計学的な評価の仕方と、メタ回帰分析(meta-regression)について説明していきます。

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。