ドクター・キッド

〜小児科医が解説する子供の健康・病気と単なる雑記のブログ〜

新生児の22%は頭蓋癆で、完全母乳栄養だとビタミンD不足状態が遷延しやすい

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今回はこちらの論文をピックアップしました。

母乳栄養は様々な利点がありますが、全く欠点がないわけではありません。

例えば、鉄欠乏や脂溶性ビタミンの欠乏は以前から指摘されています。

今回は日本の小児において、完全母乳栄養とビタミンDをトピックした論文をみつけたので、ご紹介します。

www.ncbi.nlm.nih.gov

研究の背景

▪️ 頭蓋頭蓋癆について

頭蓋癆(ずがいろう)は、頭蓋骨が柔らかくなった状態をいいます。

正常な新生児でも頭蓋癆を認めまずが、近年はビタミンD不足が原因の1つと報告されています。

▪️ ビタミンD不足が小児の健康に与える影響

ビタミンDは骨を丈夫にする栄養素ですので、不足してしまうと赤ちゃんの骨が弱くなり変形しやすくなる「くる病」になることがあります。

ビタミンD不足はくる病以外にも;

  • 1型糖尿病のリスクが上がる
  • 気管支喘息のリスクが上がる
  • 下気道感染(気管支炎・肺炎)のリスクが上がる
  • 統合失調症のリスクが上がる

など、様々な報告がされています。

▪️ 研究の目的

今回の研究では、日本の健常新生児で頭蓋癆の頻度をスクリーニングし、さらにカルシウム、ビタミンDなどの代謝を確認しています。

欧米と異なり、日本では完全母乳栄養の新生児・乳児にビタミンD投与は行われておらず、さらにミルクなどにもビタミンDが添加されていない環境で、この研究が行われました。

研究の手法

2006〜2007年の京都にある病院で生まれた1120人の健常な新生児をスクリーニングしました。

頭蓋癆は専門医が診察で診断しています。

1ヶ月後にカルシウム代謝(カルシウム、リン、ALP、副甲状腺ホルモン、25-OHD (ビタミンDの1つ)などが計測されています。

さらにレントゲンを撮影して、二人の専門家でくる病の早期画像所見がないか確認しています。

研究の結果と考察

▪️ 頭蓋癆の頻度は22%

1120人の新生児のうち、246人(22%)が頭蓋癆と診断されています。

頭蓋癆の診断は、4月〜5月に生まれた子供に少なく、11月に生まれた子供に多い傾向がありました。

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これまで頭蓋癆は「正常の範囲内・生理的な状態」と見なされてきましたが、このように季節変動を示しており、胎児が子宮内でビタミンD不足に陥っていた可能性があります。

▪️ 頭蓋癆の新生児の1ヶ月後

頭蓋癆と診断された246人のうち、233人が1ヶ月後に再検査しました。

  • 63人(27%)は頭蓋癆が残っていた
  • 68人(29.2%)は手のレントゲンでくる病の兆候を認めた

結果でした。

これらの結果からも、子宮内でのビタミンD不足は出生時の頭蓋癆の原因になりうるし、適切に介入が行われないと「くる病」のリスクになりうると考えられています。

▪️ 完全母乳栄養のほうがビタミンD不足の傾向

完全母乳栄養のほうが、血中のビタミンD不足の傾向がありました。

ビタミンDの値が 10 ng/ml以下の新生児はビタミンDの補充が必要と判断し、ビタミンD製剤が処方されました。

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完全母乳栄養を行い、ビタミンD不足となっていた新生児は、副甲状腺ホルモンやALPという骨代謝の指標となる数値も異常を示していました。

▪️ 「くる病」は過去の病気ではない

「くる病」と聴くと過去の病気と答える小児科医もいるかもしれませんが、決して過去の病気ではありません。

アメリカ小児科学会は既にこの事実を深刻に考えており

「新生児全員に1日あたり200単位のビタミンDを赤ちゃんに投与すべき」

とまで勧告しています。

日本ではビタミンKのようにルーチンに投与するシステムはありませんが、特に完全母乳栄養の場合は;

  • 産前から母親が1日10〜15分でも日光浴をする
  • ビタミンDの豊富な食物を母親が積極的に摂取する
  • 乳児も適度に(10分前後でもよいので)日光浴させる
  • 完全母乳をする場合、乳児にビタミンDを投与する

といった方法から選択されると良いでしょう。

森下仁丹BabyD3.7g

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まとめ 

既にアメリカなどではビタミンD不足のケアが新生児からされていますが、現在の日本のシステムでは不十分な対応です。

完全母乳栄養のメリットは非常に多いですが、ビタミンDの不足は注意されたほうがよいと思います。