疫学

コーヒー・紅茶は肝臓ガンのリスクを下げるかもしれない

今回はコーヒー・紅茶は肝臓ガンのリスクを減らすかもしれない、という報告をした論文をピックアップしました。(全文、無料で読めます)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ijc.29214

かくいう私はコーヒーが大好きで1日に4−5杯ほどコンスタントに飲んでいます。

夜に飲むと眠れなくなるので、主にお昼過ぎまでに大量に消費しています。

こんなにコーヒーを飲んで大丈夫だろうか?とふと疑問に思ったため、こちらの論文を紹介します。

 研究の背景

肝臓ガンの85-95%は原発性であり、危険因子は

  • アルコール
  • アフラトキシン
  • 肥満

がこれまでに報告されています。

2000年から、コーヒー・紅茶の消費量と肝臓ガンのリスクはアジアを中心に研究されて、メタ解析でもコーヒー・紅茶を摂取すると肝臓ガンのリスクを下げると報告されてきました。

しかし、ヨーロッパを中心に行った研究は少なく、アジアがメインの研究結果はヨーローッパへ一般化できない可能性を考慮して今回の研究が行われたようです。

研究の方法

EPIC (Eutopean Prospective Investigation into Cancer and nutrition) という前向きコホートが欧州で実施されており、欧州10カ国から52万人以上の25-70歳の方が参加しています。

この参加者から;

  • コーヒー・紅茶の1日、1週間、1月あたりの消費量
  • カフェイン入りか、カフェインの入っていない飲料か

の情報を入手しています。

コーヒーの消費量は5分位で分割されています。

肝臓ガンの発生は、癌登録票などから特定されています。

合計48万6千人を対象に今回の研究が行われました。

研究の結果と考察

48万人の対象者を11年追跡し、肝臓ガンは201例認めました。

コーヒーの摂取量が多いほど、肝臓ガンのリスクが減る

こちらがコーヒーの摂取量と肝臓ガンの結果です;

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コーヒーにはカフェイン以外にも;

  • ジテルペン(Deterpenes)
  • クロロゲン酸
  • フラボノイド

といった発ガン抑制作用のある物質がが入っています。

(下に示すように)脱カフェインされたコーヒーでは、肝臓ガンのリスク減少率は弱くなった点を考えると、カフェインが発ガン抑制作用で一番重要な働きをしているのかもしれません。

あるいは、カフェイン入りのコーヒーと脱カフェイン入りのコーヒーで、異なる物質があり、それが発ガンを抑制していたのかもしれません。

紅茶の摂取量が多いほど、肝臓ガンのリスクが減る

こちらは紅茶の摂取量と肝臓ガンのリスクをみています。

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紅茶も同様に、摂取量が多いほど肝臓ガンのリスクが減っています。

例えば紅茶に含まれるポリフェノールなどは抗酸化作用が発ガンを抑制したのかもしれませんし、別の物質かもしれません。

脱カフェインされたコーヒーは肝臓ガンのリスクを減らさない

ドイツ、オランダ、イギリスから集めた16万人のデータでは、カフェイン入りのコーヒーでは摂取量が増えると肝臓ガンのリスクは下がりましたが、脱カフェインされたコーヒーは肝臓ガンのリスクは変わりませんでした。

まとめ

コーヒーや紅茶を摂取量が増えると、肝臓ガンのリスクが下がりました。

また、コーヒーのほうが、肝臓ガンの予防にはより有効かもしれません。

一方で、脱カフェインされたコーヒーだと肝臓ガンのリスクは十分に下げられないかもしれません。

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。