ドクター・キッド

〜小児科医が解説する子供の健康・病気・育児〜

慢性的なヒ素を摂取は、流産や死産の誘因になるかもしれない

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井戸水というと天然の水でおいしいというイメージを持っている方がいるかもしれません。

確かに安全な井戸水であればもちろん良いのですが、井戸水には予期せぬ細菌が入っていたり、化学物質が混入している場合があります。

日本ですと水質調査が行われたりしていて安全な井戸水が多いとは思いますが、ヒ素が高濃度で検出されるケースもあります。(http://www.city.kamisu.ibaraki.jp/4408.htm)

▪️ 日本の地下水のヒ素濃度

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こちらは千葉県の地下水のヒ素濃度を示した地図です。

緑の箇所が地下水が0.010 mg/L以上となっています。

▪️ アメリカの地下水のヒ素濃度

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こちらはアメリカ全土の地下水のヒ素濃度です。

赤印は50 μg/L以上と高い値になっている箇所が散在しているのがわかります。

 

先進国ではヒ素濃度は高い地域は少なく、基本的に安全な地域が多いでしょうが、地下水(井戸水)をそのまま飲むリスクは知っておいてよいでしょう。

 

今回は途上国で行われた井戸水のヒ素と、流産・死産を調査した研究を紹介します。

www.ncbi.nlm.nih.gov

研究の背景

地下水からヒ素が検出されることは、世界中のどの地域でも起こっています。

バングラディッシュでは80%の国民が、地下水や井戸水を飲料水として利用しており、非常に重要な水分源です。

▪️ ヒ素と病気について

ヒ素というと体に悪いイメージがあると思いますが、慢性的にヒ素を摂取すると様々な病気のリスクになります。

具体的には;

  • 皮膚ガン
  • 内臓ガン
  • 手足のしびれ、浮腫
  • 結膜炎、呼吸器症状
  • 糖尿病や高血圧

との関連がすでに報告されています。

▪️ 妊娠中のヒ素について

近年、妊娠中にヒ素を摂取すると、

  • 自然流産のリスクが高まる
  • 死産のリスクが高まる
  • 早産のリスクが高まる

といわれています。

これはチリ、スウェーデンハンガリー、台湾など様々な地域からも同様の報告がされています。

今回は、バングラディッシュで同様の調査がされました。

研究の方法

バングラディッシュ国内で、ランダムに地域が選ばれました。

井戸水中のヒ素濃度は、0〜1710 μg/Lと大きくバラツキがありました。

調査の対象となったのは;

  • 15〜49歳の既婚女性
  • 妊娠歴がある
  • 喫煙をしていない

553人の女性です。これらの女性から、

  • 自然流産
  • 死産
  • 新生児死亡

の既往があるかを聴取しています。

井戸水中のヒ素は、< 50 μg/L, 51-100 μg/L, > 100 μg/Lに分類され、その井戸水の利用期間の情報を聞き出しています。

研究の結果と考察

▪️ 妊娠中の慢性的なヒ素摂取は有害

ヒ素量が 50 μg / L 以上の井戸水を慢性的に摂取していた場合;

  • 自然流産のオッズは2.5倍(1.5〜4.3)
  • 死産のオッズは2.5倍(1.3〜4.9)
  • 新生児死亡のオッズは1.8倍(0.9〜3.5)

という結果でした。*( )内は95%信頼区間

流産や流産のほうがオッズが高かったのは、胎児のほうがよりヒ素の影響に弱いからと考えられています。

▪️ 長期間の摂取ほど有害

特に10年以上、ヒ素の濃度が高い井戸を使用している場合に、これらのリスクは高い傾向にありました。

▪️ 研究の限界

井戸水の濃度と個人レベルでの摂取量が相関していない可能性があります。

インタビュー形式で行った研究ですので、思い出しバイアス(Recall Bias)が起こっている可能性があります。

インタビューをした人によるバイアスが混入している可能性もあります。

横断研究ですので、ヒ素と妊娠のアウトカムの自制が逆転している人もいるかもしれません。

まとめ

この研究から、慢性的なヒ素摂取は流産や死産の誘因になるかもしれません。

水質の管理は非常に重要といえます。