感染症

こどもの首にしこりがあります 〜主に頚部リンパ節炎について〜

  • 『首に小さなしこりがあります』
  • 『顎のしたに出来物があります』
  • 『耳の後ろに、なにかしこりのようなものがあって…』
  • 『この、首のグリグリ、なんですか?』

と心配されて受診されるケースは時々あります。

お風呂に入った際や、ちょっと顔や首回りを触った時に気づかれることが多いです。
多くは頚部リンパの腫れで、様子をみていてよいことがほとんどです。

今回は、頚部リンパ節炎について説明します。

リンパ節ってなんですか?

 

みなさんが気になって外来受診される『グリグリ』『しこり』の正体は、リンパ節のことが多いです。首の前、横、後ろにまばらに広がっている小さな組織がリンパ節です。

リンパ節の役割について

リンパ節の役割は、ウイルスや細菌などの病原体から体を守る役割があります。
つまり、感染症にかかるのを防ぐために働いてくれる組織です。

リンパ節の大きさについて

通常、こどものリンパ節は皮膚の上から触れても分からないくらい小さいです。

ですが、リンパ節はわりと皮膚に近い場所にあります。
このため、なんらかの原因でリンパ節が大きさが変化すると触れるようになります。

リンパ節の変化として多いのは;

  • リンパ節が腫れて大きくなった
  • リンパ節を触ると痛みがある
  • リンパ節の部位に一赤みがある、触れると熱感がある

あたりでしょう。

リンパ節が大きくなる原因

リンパ節が大きくなる原因は主に2つでして;

  1. ウイルスや細菌による感染症
  2. 自己免疫性疾患や悪性腫瘍など感染症以外による

の2つです。

「悪性腫瘍」と聞くと驚いてしまう保護者の方々が多いですが、ほとんどはウイルスや細菌による感染症ですので、過度に心配しすぎないで良いでしょう。

1.  感染症について

原因となる病原体で最も多いのは風邪の原因となるウイルスです。
また、溶連菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が原因となっているケースもあります。

稀ですが結核菌が原因となっていることもありますので、あなどれません。

2.  感染症以外について

感染症以外では自己免疫性疾患(川崎病やSLEなど)や悪性腫瘍(白血病やリンパ腫)の可能性がありますが、感染症と比べると非常に稀です。

リンパ節が腫れている時は、どのような検査をしますか?

受診する基準について教えてください

私個人としては、リンパ節の腫れがあり心配している場合、受診されてもよいと考えています。特に、

  • 1〜2 cm以上の腫れ
  • 触ると痛がる
  • 短期間で徐々に大きくなっている
  • 首以外にも腫れている

などが当てはまる場合は、お早めに相談されて良いでしょう。

どのような原因が多いですか?

リンパ節が腫れていると「悪い出来物(悪性腫瘍)」ではないかと心配されていることがあります。

あるいは、近くの開業医の先生に「悪性腫瘍かもしれないから、大きい病院で診てもらって」と言われると、受診までいてもたってもいられないと思います。そんな保護者の方々をたくさんみてきました。

悪性腫瘍の可能性は基本的には低く、リンパ節が腫れる原因として多いのは、

  • かぜ
  • 皮膚感染
  • アトピーや湿疹
  • EBウイルス感染や風疹など特定のウイルス感染
  • 虫歯や抜歯後
  • 川崎病

などが多いです。

あまり心配いらないリンパ節について

  • 2〜3週間たっても大きさは変わらない
  • 1cm以下
  • 発熱や倦怠感など、他の症状がない

のリンパ節は、あまり心配がいらないことが多いです。

悪性腫瘍の可能性はありますか?

一部の悪性腫瘍は、リンパ節の腫れをきっかけに発見されることもあります。

例として、白血病、悪性リンパ腫などがあります。特徴としては、

  • 徐々に大きくなっていく
  • 押しても痛みを伴わない
  • 他の症状(熱が続く、倦怠感、骨や関節が痛い)がある

などを認めることがあります。

病院ではどのような検査をしていますか?

検査ですが、受診された患者さんの病歴(リンパ節が腫れている期間や程度、発熱など)や診察(腫れている大きさなど)をもとに判断しています。

  • 血液検査
  • 細菌やウイルスの検査
  • CTや超音波
  • 生検(リンパ節の組織をとってきて顕微鏡でみる検査)

を行うことがあります。

ほとんどのケースはウイルスか細菌が原因ですので、血液検査、細菌やウイルスの検査、超音波のうちいくつかを組み合わせて判断することが多いです。

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リンパ節炎の治療について教えてください

風邪などウイルス感染によって、一時的にリンパ節が小さく腫れているだけのことが多いので、特別な治療はいらないことが多いです。

川崎病など自己免疫疾患で腫れてしまっている場合は、原疾患の治療をすれば軽快します。

数週間〜数ヶ月でゆっくりとリンパ節の腫れがなくなるケースが多いでしょう。

抗菌薬(抗生剤)を使うケース

ウイルスと比較して、溶連菌やブドウ球菌などの細菌に感染すると、リンパ節の腫れは大きく、赤みを伴い、触ると非常に痛がるケースが多いです。

このような時は細菌に対して抗生物質を使用します。
内服薬で治療可能なことが多いですが、軽快しない場合は点滴から行うこともあります。

切開をすることもあります

リンパ節に膿が多く溜まってしまった場合(これを膿瘍といいます)、皮膚を小さく切って(切開)膿を排出するドレナージを行うことがあります。

まとめ

リンパ節は体を病原体(ウイルス・細菌など)から守る働きがあります。

風邪などウイルス感染が原因で、首のリンパ節が腫れることが多いです。

腫れている期間や大きさなどから、細菌感染でないか、あるいは感染以外に原因がないかを考えながら診察・治療をしています。

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。