ドクター・キッド

〜小児科医が解説する子供の健康・病気・育児〜

小児栄養学 〜その1:マクロビオティックなど菜食主義はこどもの健康に有益か?〜

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菜食主義と聞くと健康に良さそうなイメージがありますが、こどもは成長・発達に十分なエネルギー源が必要なため、菜食主義が必ずしも健康的とは限りません。

  両親がマクロビオティックなどの食事療法をしていると、そのまま小さなお子さんにも、同じ食事療法がされているケースがあります。

 

私個人の小児科医としての経験から

以前、胃腸炎で傾眠傾向がひどいため受診された幼児を外来で診察しました。

あまり普段みないほどぐったりしていたので、点滴前に血液検査をしたところ、ひどい低血糖(血糖値が10以下)と鉄欠乏性貧血(Hb 6台)が見つかりました。

日常診療では見ないほどの低血糖と貧血であり、私は不思議に思いました。
ご家族に事情を聞くと、ご両親のアレルギー体質の改善のためマクロビオティックを1年前に始めていたようです。
子供も同じ食事を摂取し続けていたようです。

おそらく、過度な食事制限のため鉄欠乏による貧血となり、さらに低血糖も起こしてしまったのでしょう。

この頃から、こどもの菜食主義が本当に安全か、疑問をもっています。
今後シリース形式で、こどもと菜食主義について、本当に安全なものなのか文献を交えながら、複数回にわたり考察していきます。

菜食主義(ベジタリアン)のこどもはどのくらいいるか?

大人の菜食主義者の割合

アメリカのデータですと、菜食主義者は3.3%と言われています。

他の先進国(ドイツ、イタリア、オーストリア、イギリス)はもう少し多く、8%〜10%程度と報告されています。

小児の菜食主義者の割合

小児では年齢や国によっても菜食主義者の割合は異なり;

  • イギリスの青年期は8%
  • アメリカの中高生は6%
  • アメリカの8〜18歳は4%

という研究結果があります。

菜食主義の分類について

菜食主義も様々ですが、おおまかに肉・魚・乳製品・卵などを食べるか否かで分かれています:

  1. 純粋菜食(ビーガン)
  2. マクロビオティック
  3. 乳菜食(ラクベジタリアン
  4. 乳卵菜食(ラクトオボベジタリアン
  5. 魚菜食(ペスカタリアン)
  6. セミベジタリアン

など分かれています。

1. 純菜食(ビーガン)について

純菜食(ビーガン)はその名の通り、卵・乳・魚・肉などは動物の肉や乳製品は食べない主義をいいます。

2. マクロビオティックについて

マクロビオティックは、玄米、全粒粉を主食とし、主に豆類、野菜、海草類から組み立てられた食事を主に食べます。

肉や魚について、厳格性をどこまで追求するかは様々で、中には白肉(鳥の胸肉)や白身魚を少量取り入れる人もいるようです。

3. 乳菜食(ラクベジタリアン

その名の通り、植物性の食品に加えて乳や乳製品を食べる人をいいます。

4. 乳卵菜食(ラクトオボベジタリアン

植物性食品と乳・卵を食べる人たちです。
牛乳や チーズなどの乳製品のほかに卵も食べるタイプで、欧米のベジタリアンの大半がこのタイプといわれています。

5. 魚菜食(ペスカタリアン)

植物性食品・乳・卵と、魚を食べる 人たちをいいます。

6. セミベジタリアン

 セミベジタリアンは基本はラクトオボベジタリアンですが、時に肉・魚・鳥を食べる人のことをいいます。

厳密には魚菜食やセミベジタリアンは、菜食主義ではないと言う人たちもいるようです(厳密な定義についてはご容赦ください)。

 

こどもの菜食主義は一般的に健康に良いのか?

本題の『菜食主義がこどもの健康に良いか?』ですが、まだ議論に決着がついていません。
(平たくいうと、現時点では本当に健康に良いか分かりません)

(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28299420)

こどもの菜食主義と健康状態に関する研究が難しい

一般的に菜食主義は、肥満やメタボリックシンドロームになりにくく、心筋梗塞・高血圧・糖尿病にはなりにくいイメージがあるでしょう。

しかし、生活習慣病は菜食主義など食事だけでなく、こどもの運動量や、家庭の社会的地位(収入や教育レベル)にも影響されます。

さらに、小児期の食生活が高血圧や糖尿病に与える影響を調べようにも、少なくとも20年以上は追跡しないといけないため、研究そのものが困難になっています。

(例えば、20年以上も追跡するとなると、莫大な費用がかかります)

成長に影響するかは、食事制限の仕方にもよります

菜食主義が身長・体重などに与える影響は数多くの研究がされています。

結論からいうと、どのくらい食事制限をしたかによって、身長や体重が影響されます。

例えば、栄養学の知識に基づいて、綿密に栄養バランスを考慮して食事制限をした場合、身長・体重は他のこどもと同じ、あるいは少し痩せている程度です。

一方で、無計画に厳格な食制限をすると、低身長や痩せの原因になることが既にわかっています。
その後、食制限を緩くすると、正常な身長・体重に近づくため、食制限をするタイミングも重要といえます。

まとめ

こどもの菜食主義については、本当に健康によいかは、はっきりしていません。

正しい栄養学の知識に基づいて、成長に必要な栄養素を事前に検討して菜食主義をする分には、成長にはあまり大きな影響はなさそうです。

一方で、過度に食制限をすると成長に影響がでます。

 

次回は小児の菜食主義と総カロリー摂取不足について説明していきます。

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