ドクター・キッド

〜小児科医が解説する子供の健康・病気と単なる雑記〜

母乳育児:赤ちゃん・お母さんが受けるメリットを解説します

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母乳について語ります

今回は、母乳栄養が赤ちゃんに与えるメリット、母に与えるメリットの双方を説明していきます。

母乳にはタンパク質・脂質・ビタミン・糖質など、赤ちゃんの成長・発達に欠かせない栄養素が多数含まれています。
これらだけでなく、粉ミルクには含まれていないものも多く含まれています。例えば;

も入っています。

Inspiring Breastfeeding Photo

母乳育児が赤ちゃんへもたらすメリット

母乳育児は;

  • 感染症の予防になる
  • 感染症の重症化を予防する
  • 乳児突然死症候群を予防する

などのメリットがあります。

■ 母乳が感染症の予防、重症化の予防をできる理由

風邪など感染症のかかりやすさは、個人によって異なりますし、母乳だけで感染症を完璧に予防することはできません。
ですが、母乳には、母親由来の免疫物質が沢山含まれていて、感染症そのものの予防、さらに重症化も予防してくれます。

母乳には、例えば;

  • 免疫グロブリンA (IgA) 
  • 白血球(リンパ球やマクロファージなど)
  • サイトカイン

などが含まれており、赤ちゃんを感染症から守ってくれます。

Antibodies

■ 母乳が予防してくれる感染症

母乳は赤ちゃんの感染症を予防してくれますが、具体的には:

に対して予防効果がある、と複数の研究から分かっています。

■ 母乳は乳児突然死症候群(SIDS)のリスクを下げます

乳児突然死症候群は、これまで元気だった乳児が、事故・窒息などとは関係なく、突然、亡くなってしまうことをいいます。
原因不明ですが、リスクを下げる方法は、過去の研究から分かっています。

母乳が乳児突然死症候群を予防するメカニズムはよく分かっていませんが、母乳栄養を続けることで、60%ものリスクを減らすといわれています。

■ 母乳栄養は慢性疾患も予防してくれます

母乳は乳児期の感染症や突然死など、急性期の疾患予防だけでなく、慢性疾患の予防にもなります。例えば;

  • アレルギー疾患を予防する
  • 将来、肥満、糖尿病など生活習慣病の発症リスクを下げる
  • 白血病など血液系の悪性腫瘍のリスクを下げる

といったメリットがあることも、最近わかってきました。

Obesity in children

■ 母乳栄養のそのほかのメリット

 母乳栄養が急性疾患、慢性疾患などの病気以外にも、赤ちゃんにとってメリットがあります;

  • 6歳時点でのIQが高くなる
  • あごの発達がよくなる

といった恩恵もあります。 

母乳育児が母親にもたらすメリット

お母さん側の母乳栄養のメリットとして;

  • 産後の出血量が減る
  • 産後に自然と痩せられる(かもしれない)
  • 経済的負担が少ない
  • 乳ガン・卵巣ガン・子宮体ガンのリスクが下がる

などがあげられます。

■ 産後の出血が少なくなります

母乳を与えるときに、乳首が刺激され、オキシトシンというホルモンがでます。
このホルモンは、子宮の収縮を助けるため、産後の出血が少なくなり、子宮が早く元に戻るといわれてます。

■ 自然と痩せられる(かもしれない)

母乳から栄養分はでていきますので、授乳中は自然と痩せていくかもしれません。 
ただし、科学的な根拠はまだ不十分です。

■ 経済的負担が少ない

粉ミルクを買わなくてよいため、経済的負担が少ないです。
また、夜の負担も母乳のほうが少ないでしょう。
わざわざ起きて、お湯を入れて、冷ましてミルクを作る必要がないからです。

Money

■ 乳ガン・卵巣ガン・子宮体ガンのリスクが下がる

現在も研究は盛んに行われていますが、母乳育児をすることで、乳ガン・卵巣ガン・子宮体ガンのリスクが3割程度低下するといわれています。

母乳育児をしている期間は排卵がないため、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が低下するため、発ガンのリスクがさがるのでは、といわれています。

母乳育児はメリットが多いですが…

これまで説明してきたように、母乳育児は母子ともどもメリットが大きいですが、注意点もいくつかあります。

■ 鉄欠乏・ビタミンD欠乏に注意しましょう

母乳栄養で不足しがちなのは鉄分とビタミンDです。
もともと日本人女性は野菜中心の食生活の方が多く、日差しを避ける生活が多いので、鉄分とビタミンDが不足しやすいです。
特に、妊娠・出産・育児の期間は、母と赤ちゃんの両方に栄養を与えないといけないので、鉄分・ビタミンの不足が顕著になることがあります。

鉄分が足りないと貧血になりますし、発達にも影響することが分かっています。
ビタミンD不足は「くる病」という骨の病気の原因になります。

出産前後はしっかりと栄養をとるのと、適切な時期に離乳食を導入することで、これらのリスクは減らせると思います。

■ 完全母乳にこだわりすぎないで!

母乳栄養のほうが赤ちゃんにとって有益なのは明らかですが、完全母乳に固執しすぎるのもよくありません。
仕事・生活環境が理由で、完全母乳が難しい場合などあると思います。

このようなときは、粉ミルクを足してもよいでしょう。
時々、産院が完全母乳にこだわりすぎるため、赤ちゃんに十分な栄養が行き届いていない場合があります。

赤ちゃんは体重増加も非常に重要です。
特に初産などでは母乳が出づらいこともあり、赤ちゃんの体重増加が悪いこともあります。
感染症の予防も大事ですが、体重増加も赤ちゃんの成長・発達で非常に重要です。
ですので、母乳のみで足りてない時は、迷わずに粉ミルクを足してあげてください。

◎ 母乳育児に関することは、こちらの本が丁寧にわかりやすく書かれています。これから母乳育児を始めるけれども、色々と不安がある方は、一度読んでみると良いでしょう。

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