ドクター・キッド

〜小児科医が解説する子供の健康・病気と単なる雑記〜

【書評】「学力」の経済学(中室牧子)

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『いまさら感』がすごく満載ですが、最近になって『「学力」の経済学(中室牧子)』を読んだので、書評を書きました。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

普段の私は、小児科医として外来の仕事をしたり、疫学者としての仕事もあるので『疫学研究』という名のもとデータ解析をしたり、臨床研究の相談に載ったり、英語論文を読んだり、書いたり、査読したりもしているので、比較的、最近の小児科の治療方針やトレンドは、わり敏感で詳しいと思っています。

その反面、外来でのお母さんからの質問は多種多用で。いつも自分の勉強不足を感じています。
とりわけ困る質問が『こどもの教育』です。

『医療に関係ないから・・・』とスルーするのは簡単なのですが、自分を信頼してくれて、定期的に受診してくれている大切な患者さんとそのご家族です。
『出来るだけ有益な情報をあげたい』という思いと、知り合いの疫学者のオススメでこの本を手に取ってみました。

「学力」の経済学ってどんな本?

Reading

以下、Amazonでの紹介文をそのまま抜粋しています。

TBS系列「林先生が驚く 初耳学」(2016/9/25,10/9,11/6放送)で「日本国民全員が一冊持つべき」と紹介された話題の一冊!

「思ったよりカンタンだった! 」 「わかりやすくてスラスラ読めた! 」 など反響続々!

教育書として異例の30万部突破!

「ゲームは子どもに悪影響?」
「子どもはほめて育てるべき?」
「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」

個人の経験で語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

「データ」に基づき教育を経済学的な手法で分析する教育経済学は、 「成功する教育・子育て」についてさまざまな貴重な知見を積み上げてきた。

そしてその知見は、「教育評論家」や「子育てに成功した親」が個人の経験から述べる主観的な意見よりも、 よっぽど価値がある―むしろ、「知っておかないともったいないこと」ですらあるだろう。

本書は、「ゲームが子どもに与える影響」から「少人数学級の効果」まで、 今まで「思い込み」で語られてきた教育の効果を、科学的根拠から解き明かした画期的な一冊である。

簡単にまとめると『研究結果から分かる、本当に効果的な教育法』について書かれています。

小児科医として『なるほど、そうだよな〜』と納得するところもありました。

『こんなことを親御さんに伝えたいな』と思ったところも沢山あり『1回読むだけではもったいない』『何度も読みたい』と思わせてくれるような本でした。

この本の大雑把なまとめですが、まずはこちらをどうぞ。

『 評論家の個人的な意見』<『教育学の研究結果』

とあるテレビ番組で、子どもの育て方について議論していたところ、

  • ご褒美で釣っては「いけない」
  • ほめ育てはしたほうが「よい」
  • ゲームをすると「暴力的になる」

という見解を、教育評論家や子育ての専門家と呼ばれる人たちが、満場一致で述べていました。
司会者やゲストの反応からも、この主張はすんなりと受け入れられていたように思います。

私が幼少時にも親や教師なども同じことを言っていましたし、『まあ、そうだよね』と私も直感的に何となく納得してしまっていました。

■ 個人的な経験には限界がある

しかしながら『ご褒美で釣っては「いけない」』などの主張の多くは、教育者としての個人的な経験に基づいているため、科学的な根拠が十分ありません

つまり、彼ら専門家の主張が「なぜその主張が正しいのか?」「その根拠はどこにあるのか?」という説明が十分になされていないからです。

■ 教育経済学はデータを使って客観的に分析している

『教育経済学』では、データという客観的な指標を使って、教育を分析しています。
子育て中のご両親や学校の先生という個人レベルではわからないことも、データを使った解析を行えば分かるときがあります。

第1章 他人の〝成功体験〞はわが子にも活かせるのか?

『こども●●人を○○大学に入学できたお母さんの話』

といった体験記に注目されることがあります。
しかし、こういった例をよく考えてみると、これは単なる例外中の例外です。
例外的な個人体験のほうがメディアでは面白がられますが、誰にでも当てはまることでない点を肝に銘じておくべきでしょう。

■ 例外は例外と知る

『例外的な個人の体験』は一般化はできません。
つまり、『○○大学へ合格したお子さんをもつお母さん』の話は、ほぼ他の人には応用できない特殊な例なのです。

教育経済学で分析された結果は、個人の体験を大量に観察することで見出された規則性です。
もちろん『○○大学に入学させた』お母さんの特殊例も、そうでない普通のお母さんの例もデータには組み込まれています。

このため『データは個人の経験に勝る』わけですし、幅広く皆さんに応用できるのです。

第2章 子どもを〝ご褒美〞で釣ってはいけないのか?

この章では『科学的根拠に基づく子育て』について書かれています。
こういわれると堅苦しい感じですが、『目の前のニンジン作戦』など、熱く語られています。

  • ご褒美は「テストの点数」vs.「本を読んだら」?
  • ご褒美は「お金」vs. 「その他」?
  • 「あなたはやればできるのよ」は効果的?
  • 「頭がいいのね」vs. 「よく頑張ったね」はどっちがいい?
  • テレビやゲームはやめさせるべき?
  • 「勉強しなさい」というべき?

の答えと解説が、この章には懇切丁寧に書かれています。

第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか?

ここでは、人生の成功に重要な『非認知能力』について書かれています。
『非認知能力』とは、我慢強い、社会性がある、積極的など人間の気質や特徴のことをいいます。

  • 自制心
  • やり抜く力
  • モラル

といった非認知能力を育てることで、将来の年収・学歴・職業にも大きく影響する理由が解説されています。

第4章 〝少人数学級〞には効果があるのか?

ここでは、『小人数学級』の是非が書かれています。
日本でも『40人学級vs.35人学級』が議論されています。
ですが、中室先生によると;

  • そもそも、「小人数学級=20人」ですから!
  • 小人数学級は費用対効果が低いですから!
  • 『35人に減らす』政策は、賢い教育投資ではない!

といった、エビデンスなき日本の教育政策について、やや辛辣に語られています。

第5章 〝いい先生〞とはどんな先生なのか?

ここでは「良い先生に出会うと人生が変わる」ことが書かれています。
「遺伝子・家庭環境」など子供にはどうしようもないことを解決できる唯一の存在が、学校の先生です。
教員の質を高めれば、子供達の意欲や学力の改善にもつながり、その子の将来を明るいものにするポテンシャルがあります。

教員の質を高めるために

  • 教員の待遇を改善する
  • 教育研修を行う
  • 教員免許の制度をあえてなくす

といった政策の善し悪しが解説されています。
日本の教育に欠けている教員の「質」を解説している章でした。

まとめ

Child Reading

経済学がデータを用いて明らかにしている教育や子育て方法は、 教育評論家や子育て専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値があります

というより、知っておかないともったいないことでしょう。 

これからは外来で教育について聞かれたら、ここに書かれていることを説明して『学力の経済学って本がオススメですよ』と返事しようと思います。

子育て中の方、教育関係者など広くオススメできる本です。
私も繰り返し読んでいます。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

■ 合わせて読みたい

中室牧子先生と津川友介先生が共同で書いた新書です。
こちらは医療ネタが多いですが、とても読みやすい本でした。
こちらも今更感が満載ですが、また時間がある時にレビューを書こうと思います。

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

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