小児科

小児のアトピー性皮膚炎について解説します

アトピー性皮膚炎のポイント

  • アトピー性皮膚炎は『慢性的なかゆみを伴う湿疹』です
  • 治療には長期間かかります
  • 治療の基本は、肌の清潔・保湿とステロイド軟膏です
  • ステロイド軟膏は正しく使えば怖くありません
Dr.KID
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まずはポイントから。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは『かゆみが強く、長く続く湿疹』です。
この『湿疹』にもいくつか特徴があり;

  • ひどい痒みを伴う
  • 皮膚に赤みがある
  • 乾燥肌(ドライスキン)が目立つ
  • 長期間にわたり続く
  • 頭、顔、関節周囲にでやすい

などがあげられます。

アレルギー体質のお子さんに出やすいです

アトピー性皮膚炎は、食物アレルギーなどアレルギー体質のあるお子さんに出やすいです。
その一方で、食物アレルギーがなくても、アトピー性皮膚炎になる可能性があります。

20歳までに95%の人は、何らかのアレルギー物質に反応します。
ですので、きっかけがあれば、誰でもアトピー性皮膚炎になってしまうのです。

アトピー性皮膚炎の発症のメカニズム

アトピー性皮膚炎の発症には順序があり;

  1. 皮膚のバリア機能が障害され
  2. 色んな刺激を受けるようになり
  3. アレルギー性の炎症が起こり

最後にアトピー性皮膚炎が発症すると考えられています。

 

① 皮膚のバリアが障害される原因

乳幼児の肌は、皮脂の分泌が少ないため、非常に乾燥しやすいです。
皮膚が乾燥すると、皮膚のバリア機能が崩れやすくなります。
逆に、しっかりと皮膚を保湿すれば、皮膚のバリア機能は維持でき、湿疹はできにくくなります。

 ② 刺激物と接触する

皮膚のバリアが崩れたところ、つまり壊れた皮膚のすき間から、ほこり、ダニ、カビ、食物などのアレルギーの原因となる物質が入り込みます。
皮膚の下には免疫細胞が沢山いるため、これらの物質と徐々に反応を起こすようになります。

③ 皮膚に炎症が起きる

皮膚が荒れてバリア機能が低下し、皮膚の隙間からアレルギーの原因物質が通過すると、最後は皮膚の深いところでアレルギー物質と体の免疫細胞が反応するようになります。
アレルギー物質と体の免疫細胞が反応すると、炎症が起こるため、皮膚に湿疹ができ、アトピー性皮膚炎となります。

湿疹が出やすい部位

どの世代でも、全体的に乾燥肌を認め、湿疹が左右対称に出ているのが特徴です。
ですが、湿疹が出やすい部位は、乳児と幼児・学童によって異なります。

Dr.KID
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それぞれの年代によって、湿疹が出やすい場所が異なります。

乳児の場合

乳児の場合、顔や首回り、髪の生え際に多いです。

 

■ 幼児・学童の場合

この時期になると、手首や肘・膝の屈側に湿疹が出やすいです。

 

検査と診断

アトピー性皮膚炎の診断は、これまでの経緯を詳しく聞いて、皮膚の状態をみて判断します。 
血液検査などは、あくまでも診断の補助という位置づけでいます。

Dr.KID
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血液検査のみで診断することはありませんよ。

血液検査(IgE抗体)について

アレルギーの原因物質をみつける検査方法です。
『IgE』という抗体の量を測る血液検査で、食品、花粉、ペット、ダニなど、様々な原因物質とアレルギー反応を起こしていないか、この抗体価をみて判断します。

例えば、IgE抗体には;

  • 卵なら卵のIgE抗体
  • ダニならダニのIgE抗体
  • スギならスギ花粉のIgE抗体
  • ネコのフケに対するIgE抗体

などがあります。
100項目以上の抗体の量を調べることができますが、やりだすときりがないので、 しっかりと問診をして、反応する可能性が高いものを予測して検査できます。

ペットやダニなどの抗体が高い場合

ダニ・ペットなどが「陽性」だった場合、これらがアトピー性皮膚炎の原因と考えます。
カーペット、ソファーなどダニが溜まりやすい場所を見直してもらい、アトピー性皮膚炎の原因を家庭内から除去できるようにします。

食物の抗体価が陽性の場合

食物に対するIgE検査の数値が高かった場合、
『食事から除去したほうがよいですか?』
と相談されることが多々ありますが、必ずしも食事から除去する必要はありません。

これは、陽性であったとしても、発症の可能性がある「感作」という状態で、症状がでるとは限らないためです。
食べ物の検査結果はあくまで目安にすぎず、血液検査結果だけをみて『卵アレルギーです』ということはできません。

血液検査の結果に踊らされないで

血液検査はあくまで『アレルギーの可能性』を調べる検査です。
アレルギーの診断は、 いつ・どこで・何を食べて・何に触れて・どんな症状が出たか という情報を合わせて総合的に診断します。 

血液検査の結果だけをみて、自己判断で食品除去をしないようにしましょう。

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検査の値が高くても、症状が出ないことがあります。

アトピー性皮膚炎の治療について

アトピー性治療の基本は

  1. 肌の清潔
  2. 肌の保湿
  3. ステロイド軟膏の塗布
  4. 原因物質の検索と対策

の4つです。

1.肌の清潔について

肌を綺麗に保つには、”肌の清潔” が基本中の基本です。
皮膚に異物がついていると、肌は荒れていきます。
特にアトピー性皮膚炎の患者さんは、肌がナーブで荒れやすいため、清潔に保つことを心がけましょう。

普通の石鹸・ボディーソープで十分です

ふつうの石けんをよく泡立てて、指の腹を使って、適度に力をいれて汚れを落としましょう。
刺激の少ない、ふつうの石けんで十分です。 嫌がる顔もきちんと洗いましょう。
関節のシワは伸ばして、手をグーにしてシワをしっかり洗い、最後はよくすすぐようにしてください。

 皮膚をきれいに洗う時の注意点は以下の通りです;

  • 汗や汚れはすぐに落とす
  • 強くこすらない
  • 熱い湯は避ける
  • 痒みを感じる入浴剤は避ける
  • 洗浄力の強い石けんやシャンプーは避ける

2.肌の保湿について

皮膚の保湿のためには、入浴・シャワー後には保湿剤を使用しましょう。
タオルで軽くおさえるように水をふき、体が乾く前に、たっぷりと塗るとよいです。
使用感のよい保湿剤を選択すると良いでしょう。
保湿をすることで、肌の回復力が早くなります。

夏場はローションタイプ、冬場は軟膏タイプやワセリンを使用しましょう。
病院で処方してもらっても良いですし、市販薬でも保湿剤は沢山あります。

 3.ステロイド軟膏を塗る

ステロイド軟膏は、アトピー性皮膚炎で起きている炎症を制御するために有効です。
ステロイドに対して “怖い” という漠然としたイメージを持っている方がいますが、

  • ステロイドの強さ
  • ステロイドの使用期間
  • ステロイドを塗る場所

をきちんと決めて治療すれば怖くありません。

 4.原因・悪化因子の検索と対策

アトピー性皮膚炎の原因や悪化因子として多いのは、 汗、皮膚の汚れ、ダニ・ハウスダスト、皮膚の乾燥、食べ物、カビ、ストレス、ペットなどです。

  • 皮膚は清潔に保ち、保湿をする
  • 家庭内のダニ・カビが溜まりやすい場所を見直す
  • 規則正しい生活を心がけ、ストレスを減らす
  • (可能なら)ペットは屋外へ

などを見直してみると良いでしょう。

いつまで皮膚の治療をしたらよい?

これまで説明してきた、スキンケア・保湿・ステロイド軟膏の治療をすると、徐々にかゆみやブツブツが消え、皮膚の状態は改善してきます。
ですが、ここで治療をやめてしまうと、湿疹は再度出て来てしまいます。

皮膚の下には、アレルギーの原因となる細胞が沢山残っています。
見た目がよくなったからといって、すぐに治療をやめるのは得策ではありません。

こまで治療したらよいかですが、

かるみのない、つるつる・スベスベの肌

を手に入れるまでです。
ステロイド外用を塗らず、保湿剤だけでつるつるスベスベになれるように治療を続けましょう。

Dr.KID
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目標は、つるつる、スベスベのお肌。

 ◎ こちらの本は、アトピー性皮膚炎のお子さんのために、アレルギーの専門医の先生が書いた本です。イラストが多く、とても分かりやすい書かれているので、スキンケアについて知りたい方、アトピー性皮膚炎について詳しく知りたい方は1度読んでみると良いでしょう。私も患者さんの教育のために何度も読んでいます。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。